超音波溶着の原理

超音波溶着とは・・・(超音波溶着の原理)

超音波によるプラスチック溶着技術は自動車部品、家電製品、通信機器、事務機器、医療機器、パッケージ製品、繊維製品など幅広い分野において使用されています。 ここでは超音波溶着という技術がどのようなものなのかという原理を簡単に説明致しますので、超音波溶着に対するご理解を少しでも深めて頂き、今後の参考にして頂ければ幸いです。
超音波溶着は一般的には熱可塑性の樹脂に対してのみ有効で、熱硬化性の樹脂には適用することは出来ません。 但し超音波によるアルミや銅などの金属の接合は可能ですが、ここで言う「溶着」とは原理が異なりますので、超音波金属接合については『超音波金属接合とは』のページで説明しておりますのでそちらをご覧下さい。
超音波溶着では、次の3つの要素が溶着を左右する重要な要素となります。

超音波溶着=溶着時間×振幅×加圧力

溶着時間は超音波振動を与える時間で、振幅は超音波振動の大きさ、加圧力はワークへ与える荷重になります。 この3つの要素はいずれも必要不可欠で、この組み合わせによって溶着強度は大きく変化します。
時々『超音波溶着は非接触でもできるのですか?』というお問い合わせを頂くことがありますが、超音波溶着には必ず加圧力が必要となりますので、ホーンをワークに当てて加圧をかけることによって初めて摩擦熱が発生します。
また超音波振動を与えるホーンが熱くなって溶着を行うというふうに思われている方も時々いらっしゃいますが、ホーンやその他の振動体は常温状態で、溶着するのはあくまでも摩擦熱を発生させることによって行われるという事が重要になります。

次に超音波溶着に関わる要素には以下のようなものがあります。

周波数

1秒間あたりの振動回数で、単位はHz(ヘルツ)になります。20kHzの場合には1秒間に20,000回の振動を行うことになります。
周波数は低い方が大きなパーツに対応できますが、ワークへ与える衝撃が大きくなり、逆に周波数が高いとワークへのダメージは少なくなりますが、対応できる製品サイズの限界が小さくなります。

超音波の周波数の違いによる特徴
周波数
対応できるワークのサイズ
発振器及び振動子の最大出力
最大振幅
ワークに与えるダメージ
溶着時のノイズ
装置のサイズ

出力

一般的に発振器のスペックを示す出力は、その発振器の最大出力であり、これは自動車の最大出力と同じようなものだと考えてください。 つまり、2000Wの発振器を使用して溶着する場合、常に2000Wの出力で溶着を行っているわけではないという事です。
溶着時に必要とされる出力は、ワークサイズ、加圧力、振幅などの負荷状態によって決まり、その負荷状態に合わせて発振器が自動的に発振出力を変化させます。
ホーン先端に負荷がかかると、ホーン及び振動スタックの音響インピーダンスが高くなりますので、結果として発振出力が高くなるという仕組みです。
この発振出力が発振器の最大出力を超えそうになると、保護回路が作動し、オーバーロード(過負荷)エラーになります。
超音波ウェルダーの発振器の場合、最大出力が3000Wの物を使用して、実際の溶着時の出力が200W程度であったとしても何の問題もない為、正に「大は小を兼ねる」ということになります。 但し一般的に発振器の出力が大きくなれば、装置の価格も高くなりますので、現在必要な溶着時の出力と、将来的に生産する可能性があるワークサイズなどを考慮して適切な出力の発振器を選定します。

発振時間(溶着時間)

超音波の発振時間で、通常、溶着時間が長ければ良く溶け、溶着強度も高くなりますが、あまり長すぎると樹脂の温度が融点を超えてしまい、炭化現象を起こして脆くなり、逆に溶着強度が低下してしまいます。
気密性や水密性が必要とされるワークの溶着の場合、炭化現象が発生するとその部分から毛細管現象によって漏れが発生しますので、気密性を上げたいからといって溶着時間を長くすると逆効果になる場合もあります。 またバリの発生にもつながりますので、必要な溶着強度が得られる最短の時間に設定するのが良いでしょう。
通常は1秒以下に抑えるようにします。

冷却時間(ホールド時間)

超音波の発振が停止した後も、加圧を続けて溶着部を冷却することによって溶着強度を増すことが出来ます。
言い換えると充分な冷却時間を設けないと、溶融した樹脂が膨らんだまま再凝固してしまい、内部に気泡ができて十分な強度が得られないこともあります。
通常、硬い樹脂の溶着時には短く、柔軟な樹脂の場合には長く取ります。

振幅

ホーン先端からワークに伝わる超音波振動の大きさです。
振幅が高いと溶着性は良くなりますが、極端に高いとワークに傷やクラックが発生してしまうことがあり、また電子部品や基板などを実装しているワークの場合には、それらの内装品を破壊してしまう可能性が高くなりますので注意が必要です。
またホーンの材質上の限界もあり、20kHzの場合、チタン製ホーンでは100μm(P-P)の振幅を出しても問題ありませんが、鉄やアルミのホーンだと内部応力が母材の降伏応力値を超えてしまってクラック(疲労破壊)が発生する可能性が高くなります。
高振幅の場合は相対的に発振出力も高くなり、低振幅の場合は溶着時の出力も低くなります。
振幅にもしきい値が存在し、有る樹脂材を溶着する為に最低限必要な振幅というものがあります。 このしきい値以上の振幅を与えなければ、時間を延ばしたり圧力を上げても溶着がされません。 特に結晶性樹脂の溶着の場合には、一旦樹脂の分子構造を破壊する為に高い振幅が必要になってきます。
振幅はホーンの形状、ブースターの倍率によって大きく左右され、微細な調整は発振器のパワーコントロール機能で行います。

加圧力(荷重)

ホーン先端からワークに伝わるメカニカルパワーのひとつで、加圧力が低いと相対的出力も低くなり、高いと出力も高くなります。 振幅との相互関係があるため、溶着されるワークに合わせて圧力を設定します。
ハンディタイプの超音波溶着機では、手で荷重を与えますが、手作業の場合には加圧が不安定になり易く、結果として溶着も不均一になりやすくなってしまいます。
標準的な超音波ウェルダーでは加圧機構にエアシリンダーが使用されています。
圧力を高くすれば、溶着時間は短くなりますが、極端に高いとエネルギーダイレクター(ED)が潰れるだけで完全に溶けず、充分な溶着強度が得られなかったり、ワークが変形してしまったりすることがあります。
逆に極端に圧力を低くすると、シリンダーの使用可能範囲を下回り、動作が不安定になってしまうことがあります。 またある一定以上の圧力をかけないと樹脂が発熱せず溶着できませんので、加圧力は溶着状態を見ながら適切な値に設定しなければなりません。

『超音波溶着機の各構成部品の役割について』を読む

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